カテゴリー「楽堂 ODEUM」の37件の記事

2018年5月 3日 (木)

熱狂の日に新旧ロシアンピアニストの二公演

連休中に東京国際フォーラムで開催されるラ・フォル・ジュルネの演奏会へ初めて足を運びました。建物周囲には沢山のキッチンカーが並び、オープンカフェが賑わっていました。かつての指導学生がホールAの音場支援システムの設定に携わったこともあり、残響付加の効果の体感を兼ねて、ロシアの若手ピアニスト、ルーカス・ゲニューシャスによるショパンのピアノ協奏曲第1番を拝聴。敢えて2階バルコニーの遠くの席を選びましたが、舞台は小さく見えるものの見晴らしは良好。聴衆はまず、天井や側壁のスピーカから残響音が出ていることに気付かないでしょう。流石に音は小さいものの、ピアノの細かなフレーズも聞こえ、落ち着いた演奏に感心しました。この前座を楽しんだ後、有楽町のガード下で一杯やり、ホールB7でのベレゾフスキーのリサイタルへ。曲目は当日発表でしたが、プログラムを開けてみると、録音のないスクリャービンの練習曲作品65やソナタ5番など、大当たり。残響の乏しいホールでしたが、明瞭に聞こえる演奏の詳細に聞き耳を立て楽しみました。熱狂の日は、総じて満足な一日となりました。

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2018年3月30日 (金)

浦安音楽ホールの響き 余興のメトネル再演

音響学会の研究会が昨年開館した浦安音楽ホールで開催され、一人二役、仕事上の記念講演と役得の試聴演奏を担当しました。客席数は303席、残響時間は1.8秒と規模からすると長めながら、1階側壁の透かし壁や残響調整用カーテンなどの工夫で、良質な響きとして感じられました。ピアノはスタインウェイとヤマハのフルコンが備えられていましたが、今回はCFXを選択。舞台上では、ピアノの性格で中音域がやや控えめながら、全体的に響きの豊かさと明瞭性のバランスは良く、弾きやすさに難はありません。客席部には1階後方角部の小さなバルコニーや2階のサイドバルコニーにも座席が配置されていて、舞台との一体感が演出されています。試聴会では、私的な選曲ながら、メトネルのおとぎ話ソナタを昨年夏以来の再演。贅沢な空間で、演奏会気分を味わさせて頂きました。

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2018年2月10日 (土)

ムストネン来日公演 ノンレガート奏法による刺激的な音楽

フィンランドの奇才とも称されるピアニスト、オッリ・ムストネンの演奏を聴きに、土曜の昼下がりのすみだトリフォニーホールへ。以前から、ショスタコーヴィッチとアルカンの前奏曲集、プロコフィエフ「束の間の幻影」とヒンデミット「ルードゥス・トナリス」、といった珍しいカップリングのCDに注目していましたが、生演奏は初めて。前半はシューマン「子供の情景」とプロコフィエフの第8ソナタ。独特のノンレガート奏法により刺激的な音楽が繰り広げられ、特にプロコフィエフの終楽章は圧巻。よくもあれほどの鋭敏な打鍵にピアノが追従できるものと感心しました。後半のベートーヴェンの「森のおとめ」変奏曲と熱情ソナタも類を見ない演奏。熱情はかなり奇異な印象を受けましたが、変奏曲は光るものあり。若い頃の録音にベートーベンの変奏曲集があることを知り、早速物色しましょう。

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2017年12月 6日 (水)

年の瀬の二公演 岡田博美の超絶技巧、エマールの眼差し

11月末は久しぶりに東京文化会館小ホールを訪れ、岡田博美氏のピアノリサイタルへ。標題は「Virtuosity - バロックから近代まで」、前半はバッハの半音階的幻想曲とフーガに始まり、ワルトシュタイン、後半はリャプノフのレスギンガやドン・ジョバンニの回想など、名技性満載のプログラム。バッハの緻密な演奏に対して、後半は意外にも情熱が過ぎ、勢いで走り抜けた印象を受け、やや残念。ホールでは中央やや右寄りの席でしたが、低音域が過多に響き、明瞭性が今ひとつ。記憶では良い音響のイメージがありましたが、前回訪問が思い出せません。少なくとも2014年の改修前ですが、改修の影響か、聴く耳が変わったのか。12月初めは東京オペラシティコンサートホール にて、エマールによるメシアンの幼子イエスに注ぐ眼差し全曲演奏会。最大の期待を持って向かいましたが、演奏会というより宗教的な精神体験のようで、期待以上の圧倒的な感銘を受けました。自身の存在すら意識させない程の音楽への没入感は、エマールの高度な演奏技術と音楽的理解が為せる業。ホールの雰囲気も大いに貢献、もちろんメシアンのまさに神懸かり的な創造があってこそ。

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2017年9月24日 (日)

南予を行く 郷愁の内子・大洲から八幡浜へ

連休中は研究室企画として、一泊二日の南予の旅。内子は二十年前に訪れて以来でしたが、大洲街道の古い町並みや内子座はしっかり手入れされていました。木蝋資料館となっている上芳我邸は重要文化財として有名ですが、日本のビール王が育ったという高橋邸も風情があります。宵の口に街で夕食を取り、内子にある千代の亀酒造と酒六酒造の銘酒を入手して、鄙びた山間の小薮温泉に宿泊。翌朝は大洲の町並みを散策し、明治の名建築、臥龍山荘へ。肱川を望む崖上に数奇な建物と庭園は、期待以上に品格があり見事。崖を見下ろす不老庵の茶室で優雅に茶を頂きました。大洲城の天守に上った後は、西に向かい八幡浜へ。港で豪勢な海鮮丼を食し、市場で地の魚を見て回った後、旅の終わりは諏訪崎まで若干ハードな行軍。西国の果てにて、豊後水道と佐田岬半島の景色を拝みました。

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2017年8月12日 (土)

涼夏の定例演奏会 メトネルのソナタ初挑戦

山の日の翌日、ルーテル市ヶ谷ホールにて演奏会「ぴあの好きの集い」に出演。8月に入ってからのかつてない涼夏のお陰で、数年ぶりに体調不良もなく、落ち着いて演奏会に臨めました。いつもの長丁場の中、今回はメトネルのソナタに初挑戦。コンパクトながら3楽章形式の中でメトネルの多彩なピアニズムを味わえる「おとぎ話ソナタ」を選曲。完成度は上がらず仕舞いのため、本番では綻びが多々出てしまいましたが、久しぶりにロシアの旋律が体を駆け抜け、大地のパワーを得た気分になりました。しばらくロシア物を物色することになりそうです。Performance Historyを更新。

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2017年7月 4日 (火)

フレイレ来日公演 ブラジルの自由さと優しさに満ちた音楽

今や巨匠として名高いネルソン・フレイレには長年強い関心を持っていましたが、生で聴く機会に巡り会えずにいました。12年振りの来日公演が開かれると知り、万難を排してすみだトリフォニーホールへ。曲目変更を受けて、前半にバッハ編曲物とシューマンの幻想曲、後半にヴィラ=ロボスの小品とショパンの第3ソナタ。いずれも若い頃の録音は聴いていますが、年を積み重ねた今の演奏に関心が集まります。最初に舞台袖から七十過ぎの老人が小さな歩幅で登場した時は少し心配しましたが、ピアノを弾き始めた瞬間に杞憂に終わり、意外にも誠実で優しさに満ちた演奏に心打たれました。壮年期にはアルゲリッチにも比肩する情熱的な演奏、特にラフマニノフ第3協奏曲やシュトラウス=ゴドフスキ「こうもり」、ヴィラ=ロボス「野生の詩」が強く印象に残っていましたが、実は昔から演奏に派手さや奇をてらうことはなく、正統派だったことに気付かされます。とはいえ堅い正統ではなく、ブラジルの風土を連想させる自由さと大らかさが、音楽をより豊かに響かせているようです。ショパンのソナタ最終楽章やアンコールでは、さりげなく高度な技巧も披露。ブラジルの巨匠は、聴く人を幸せな気分にする類い希なピアニストでした。

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2017年5月 9日 (火)

カツァリス来日公演 大手町でシューベルトの夕べ

浜離宮のロシア物から4年振りにカツァリスの来日公演を聴きに、夕方の仕事帰りに大手町の日経ホールへ。今回のプログラムはオール・シューベルト、正直に言えば、彼のシューベルトにはあまり期待しておらず、初めて訪れるホールの方に興味がありました。お馴染みの即興演奏で幕を開けると、前半は楽興の時や即興曲、3つの小品から数曲、リスト編曲3曲を一気に弾きましたが、彼の自由奔放な演奏がシューベルトの詩情の明るい側面を際立たせていました。後半はソナタ第21番でしたが、音楽が次々に流れていくようで、この名曲の深遠な世界には程遠い印象を持ちました。とにかく彼が健在なことがなにより、また面白いプログラムを企画してくれることでしょう。ホールの方は多目的ということで残響は乏しい上、6列目正面にもかかわらず音量も小さく、残念ながら名演をじっくり味わえる場ではありませんでした。チケット代は随分安価でしたが、安かろう悪かろうということか。

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2016年11月26日 (土)

P2演奏会十回目終了 東欧以東の珍曲・好演目白押し

二年に一度のこの時期恒例、Piano Perspectivesの記念すべき第10回演奏会「文化の十字路~東欧から中央アジアへ~」をかつしかシンフォニーヒルズのアイリスホールで開催しました。いつもの如くゆったりと客席で仲間の演奏を楽しみましたが、今回は二十年来の十回目ということで、出演者数も過去最大、普段聴くことのない曲もずらりと並び、しかも完成度の高い好演が続きました。アマチュアながら年を経る毎に磨きがかかる様に大いに刺激を受け、今後も益々楽しみです。私自身はバルトーク、ヴラディゲロフ、スメタナと初めて弾く作曲家ばかり。ルーマニア、ブルガリア、チェコの民俗音楽に触れ、東欧を巡った際の風景が脳裏に蘇り、新鮮な気分に浸ることができました。下町での演奏会が3回続きましたが、次回はいよいよ上野の森、旧奏楽堂に戻るかもしれません。

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2016年11月19日 (土)

連夜のトリフォニー 森下のアルカン、ロジェのドビュッシー

週末二晩続けて、すみだトリフォニーホールに散策がてら自転車で出かけました。金曜は小ホールにて森下唯氏のオール・アルカンプログラム、前半に「鉄道」、後半に「ピアノ独奏による協奏曲」と破格の練習曲が並びます。「鉄道」では驚異的な速弾きをこなし、鑑賞に堪える作品として見事に成立。独奏協奏曲では、巨大な第1楽章で多少の混乱や同音連打が埋もれるなど、さすがに苦しい箇所が見受けられましたが、蛮族風の終楽章では真骨頂が存分に発揮されていました。土曜は大ホールにてパスカル・ロジェによるドビュッシーの前奏曲集、舞台背景に投影される葛飾北斎の浮世絵を眺めながらの風流な演奏会。来週開館するすみだ北斎美術館に向けた企画のようです。三十年前に買ったロジェのプーランクのCDはお気に入り、ようやく彼の生演奏を聴くことができました。若かりし頃の録音では切れ味の良い音質とリズム感が光りましたが、今回のドビュッシーでは円熟味たっぷり、暈かしや余韻を生かす技の数々に新鮮な感動を覚えました。ところで、映像で現れた「風流 隅田川八景」「雪月花 隅田」を新しい美術館で改めてじっくり鑑賞したいものです。

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